またまた、意味深なタイトルである。しかし、みゆきは自分の音楽の方向性を追い求め、ここに自分の求める形がおおよその形でできあがったから出産間近の意味を持つ言葉を選んだのだと思う。前回のアルバム『生きていてもいいですか』と打って変わって明るい曲が多い。

編曲は井上陽水の名アルバム『断絶』のアレンジャーとして名をはせた編曲家の星勝が1・8曲目を、アコースティックギター奏者として参加している元「六文銭」のギタリスト安田裕美が2曲目を、キーボード奏者として参加しユーミンの旦那でもある松任谷正隆が3・7・9曲目を、編曲家の萩田光雄が4・5・6曲目を担当している。

このアルバムのオリコン最高位は、1位。

題名 歌詞
曲調
解説
あした天気になれ
ボサノバ
「雨が好きです 雨が好きです あした天気になれ」「愛が好きです 愛が好きです あした孤独になれ」など反語がちりばめられている。自分の思い通りには人生は進まないと楽観主義を戒めている。
あなたが海を見ているうちに
フォーク
ストリングスを効果的に使った美しい曲である。ふられ節。海岸沿いの道を男から遠ざかる女の心情と風景が手に取るように見える。女の強がりが余計に女の悲しみを増す。
あわせ鏡
ジャズ
あわせ鏡とは2つの鏡を正対させること。鏡に鏡が映って無限の空間が生まれたような錯覚を起こす。自己嫌悪から薬やお酒におぼれながらも、自分が何になりたいのかを求めている人々を歌っている。
ひとり上手
フォーク
ふられ節。「ひとりが好きなわけじゃないのよ」と歌っているが、題名はその反語ともとれる。中島みゆきのオールナイト・ニッポンの放送の中で、「ひとり上手」というリスナーからの投稿コーナーがあったのを懐かしく思い出す。
バラード
父親の早すぎる死を悼んで作られた歌。父親が亡くなったのは1月で、北海道は一面の雪景色である。歌詞からみゆきは父親を尊敬し、まだデビュー前に父親が逝ってしまったことへの後悔が見て取れる。ピアノの伴奏が悲しみを増している。
バス通り
フォーク
この曲もストリングスを効果的に使った美しい曲である。喫茶店の中に女はいる。その前のバス停に男が立っている。「ねぇ 一年半遅刻よ あの日はふたりの時計が違ってたのよね」切ない歌詞である。情景がまるでドラマのように繰り広げられる。
友情
フォーク
人生歌。悲しみや痛みに満ちた暗闇の中で友情を追い求める。肉体に受けた傷はいずれ治るが心に受けた傷はなかなか治らない。自分が受けた傷はまだしも傷つけ返そうとしている自分がいる。
成人世代
バラード
これも人生歌。悲しみを笑いでごまかすのは余計に悲しみを増す。寂しさを紛らわすために踊っても終えた後は更に寂しさが募る。いつの時代でも大人と子供の間には埋められないジェネレーション・ギャップがある。
夜曲
バラード
ハーモニカが効果的。中島みゆきの優しい声が子守唄として心地よい。この曲を最後に持ってくることで、みゆきが自分の歌の方向性を見つけ出したことを明らかにしている。エンディングのエレキギターのリフレインはまるで打ち寄せる波のようだ。
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