miss.Mとは、勿論中島みゆきのことである。だが、「中島みゆき」と明言できるだけの完成度がないから、こういう題名を付けたのだろう。

 「中島みゆきの別れの歌が多くの女性の共感を呼ぶのは、孤独のヒロインになりたいという彼女たちのナルシスティックな欲望をすくいとっているからではないか。本作はそんな女性たちの心理を色濃く描いているように思える」
(『大衆歌としての「中島みゆき」案内』別冊宝島760)

このアルバムでも、これまでの中島みゆきになかった新しい音作りが見られる。
特に、『御乱心の時代』を象徴するシンセサイザーが「ノスタルジア」を除いて使用されている。
編曲は1・2・4・5・8・9曲目を後藤次利が、3・7曲目をチト河内が、6・10曲目を倉田信雄が担当している。

このアルバムのオリコン最高位は、1位。
題名 (歌詞
曲調
解説
極楽通りへいらっしゃい
ジャズ
暗いバーを連想する。男を慰める娼婦のような女が主人公。「極楽通り」とはみんな幸せにする場所か。ちなみにさくらももこが編集者との飲み会でこの歌を歌い「今日は何回頭下げたの ひとからバカだって言われたの」という歌詞で冷や汗をかいたとエッセイに書いていた。
あしたバーボン・ハウスで
ロック
前の曲からメドレーになっている。曲調はロックなのだが、中島みゆきの優しい声とのギャップが心地よい。バーボン・ハウスで男と待ち合わせをしているが、男はやってこない。男を「幻」に例えている。
熱病
ロック
前曲と対称的にこの曲では中島みゆきは張りのある声で歌っている。三人のコーラスが熱に浮かされる様を盛り上げている。
それ以上言わないで
ワルツ
男は別れを告げに海へ連れて来る。男の優しさに精一杯応えようと思う。だけど私だって弱いのよ。
孤独の肖像
ロック
イントロの静謐でなだらかなキーボードをバックに中島みゆきの1小節分のおだやかな歌声が入る。一拍おいてロックに転調する。4小節目の途中「隠して~」から再び転調する。それ以降のリフレインはネガティヴからポジティヴへの見事な移行となっている。
月の赤ん坊
バラード
中島みゆき独特のささやき歌唱法をしている。子供は「大人になんかなりたくない」と言っても大人になり、ひとりになってしまう。その成長過程を月は見守っている。
忘れてはいけない
ボサノバ
コンガ(パーカッションの一種)の音色が美しい。最初の2行はエコーがかかった高い声が流れ、本来の声が戻る(後の2行の高音部は杉本和世が担う)。人生歌。世の中に流されても忘れてはいけない大事なことがある。
ショウ・タイム
ロック
イントロのエレキギターとベースの演奏がいかにもショーの始まりを告げる。前2曲と同じく張りのある声で歌っているが、サビでは伸びやかな声が美しい。テレビという虚像の中でニュースはショウ・タイム、総理も乗っ取り犯もスーパースター。「チャンネル切れば別世界」テレビと現実は違う。
ノスタルジア
バラード
蛇足ながら「ノスタルジア」とは「郷愁、望郷」のこと。冒頭にも書いたがこの曲だけシンセサイザーを使っていない。以前のアルバムの曲を聴いているみたいだ。「思い出は物語」どんな辛いことがあったにしても過ぎ去れば「語り草」。見栄を張ったり、誤魔化すのは自分を裏切ることになる。
肩に降る雨
バラード
程よく抑えた中島みゆきの声が美しい。人生歌。死のうとしてまだ生きている自分に気付く。肩に降る雨は冷たさが、「生きろと叫ぶ誰かの声」や「生きたいと迷う自分の声」を強固にする。
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