このアルバムが発表された時、11枚目にして何を今更「はじめまして」なのかと訝った。
しかしそれはこのアルバムから色々な音作りにチャレンジしてゆく、とりわけロック色が濃くなることに対して発せられたメッセージである。
(後に中島みゆき自身が”御乱心の時代”と呼ぶ期間の始まりであった)

題名に「僕」という一人称が2曲使われている。これまでのアルバムでは彼女独特の「あたし」と「わたし(私)」しか使われてこなかった。ここにも、新境地を開こうという中島みゆきの意欲が見える。

編曲は小野崎孝輔が1、2、5、9曲目を担当し、倉田信雄が3,4、6、7、8、10曲目を担当している。

初めてアルバムの収録曲のタイトルをアルバムのタイトルにしている。
また、これまで「ふられ節」ばかりだった中島みゆきが2曲も恋歌を歌っている。これも、サウンド面ならず新たな境地を切り開こうという意思であろう。

このアルバムのオリコン最高位は、1位。新しい試みにも拘らず、1位をキープし続けていることは、中島みゆきが不動の地位を得ていることを裏付ける。

題名 歌詞
曲調
解説
僕は青い鳥
バラード
最初の曲は斬新な面は出していない。これまでにもあったバラード調である。「僕は青い鳥」と歌うように己の歌がリスナーの幸せに寄与することを祈ると共に、リスナー自身も「青い鳥」だと歌う。
幸福論
ロック
新たな音楽性を求めた曲。今までのみゆきの曲の中でロックといえるのは「あほう鳥」しかない。歌詞は逆説的な幸福論しか歌っていない。「プラスマイナス他人の悲しみを喜んでいないか」歌詞にはそれ程の重要性はないかもしれない。それより、今までのみゆきにないメロディラインが特徴的。
ひとり
バラード
この曲のシングルバージョンとアルバムバージョンでは、まるで別の曲のようである。アルバムバージョンがミディアムテンポであるに対し、シングルバージョンは超スローテンポである。歌詞は中島みゆき十八番のふられ節である。
生まれた時から
ジャズ
この曲も新たな音楽性を求めた歌。これまでもジャズ風なアレンジはあったが、サイドE・ギターのダウンストローク奏法が印象的。歌唱法も新たな試みをしている。「生まれた時から飲んでたと思うほど」という冒頭の歌詞はいかにも中島みゆきらしい。
彼女によろしく
バラード
ふられ節。この曲でも新たな歌い方をしている。「昨日死んだ若い人の掌は長生き示していた」の歌詞は手相占いに対する皮肉。「明日が見えなくて良かったわ だからあなた信じられたもの」から未来への希望を読み取るのは拡大解釈か?
不良
ロック
激しいドラムで始まるへヴィロックである。みゆきも張りのある声で歌っているが声量がまだ足りず伴奏に押されている感がある。ロックへの最初の取り組みであるから仕方はあるまい。
シニカル・ムーン
バラード
前曲の激しいエンディングから1秒足らずで、一転してキーボードの演奏のみが続く。恋歌。”御乱心の時代”は恋歌の時代だと言ってもいい。「好きだと言えば不安になる 言われていなきゃ不安になる」女心の複雑さ。
春までなんぼ
バラード
また前曲のエンディングから1秒足らずで骨太のE・ギターのイントロが始まる。みゆきはまるで喋っているような歌唱法を取っている。「ささやき歌唱法」の変化(へんげ)と言っていい。
僕たちの将来
ワルツ
この曲も恋歌である。キーボードの優しいイントロが前曲ラストと対照的。カップルの会話の部分を中島みゆきはそれを演じるかのように歌う。二人の将来に対する不安が1991年1月に始まった湾岸戦争をバックにのぞく。エンディングの図太い男の声でカウントダウンがそれを助長する。
はじめまして
バラード
カウントダウンの「ツー」で明るいイントロが始まる。ミサイル(核兵器?)の発射は認めないというみゆきの意思か?「新しい服を着る 季節のように 今来た道を 忘れてしまう」これまでのみゆきがまとってきたイメージをぬぐうことの決意。新しい自分も愛してとのリスナーへメッセージを送っている。。
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