中島みゆきがレコーディングスタジオに行くと、もう既に持ち歌の中から本人の意思に関係なくアルバムに入れる曲をアレンジしたオケが出来上がっていて、中島みゆきはわけがわからないまま歌うだけであったらしい。

従って、レコーディング期間は1週間と極めて短い間に事務的に済んでしまったそうである。何とも馬鹿にした話だ。

 ポプコンでグランプリを取ったからアルバムを出してあげますよ、というヤマハの高慢な姿勢が見て取れる。後の中島みゆきの活躍からは想像できない話である。(それでも中島みゆきは未だにヤマハ音楽振興会に属している)

もっとも、ポプコンでグランプリを取った歌手には所謂「一発屋」が多かったのも事実であるから、野とも山とも分らない歌手にヤマハも期待していなかったのであろう。

楽曲的にシンプルな歌が多い(多分にアレンジの問題と見る)反面、歌詞はすでに難解な曲も多い。

この時期の中島みゆきの声は幼い感じさえ受ける。

キャリアと共に歌声も進化してゆくが、デビュー当初の中島みゆきの声に初々しさも感じる。

いずれにしてもファーストアルバムなのだからこれくらいなのだろう。


編曲は西崎進、エジソンと発明王となっている。

「エジソンと発明王」はディレクターも兼ねており、キーボードの渡辺孝好、ドラムの裴天外、エレクトリック&アコースティックギターの裴ユキオ、ベースの石田典雄、アコースティックギターのノーマンによる共同体である。

LP盤の歌詞カードには中島みゆき直筆のメッセージがある。

この場では紹介できないが、『愛が好きです』(新潮文庫)に掲載されている。

このアルバムのオリコン最高位は、10位。
題名 歌詞
曲調
解説
あぶな坂
フォーク
「あぶな坂」は中島みゆきの造語。「危ない」坂の意か?何故「危ない」のか?ふるさとで傷ついた男が坂を転げ落ちたことを言い訳にしてあたしの元から離れられない。男への情愛と母性愛を感じさせる。
あたしのやさしい人
ジャズ
優しすぎる男への不満たらたら。後の「ふられ節」からは考えられない歌詞である。男の束縛から自由でありたいという自立した女性の姿が歌われている。
信じられない頃に
フォーク
待ちわびて待ち焦がれてとうとう待つのを諦めた頃になってあなたはやって来て愛を告げる。嘘と分っていても私は受け入れたい。でもお互い苦しみながら裏切り続ける。
ボギーボビーの赤いバラ
カントリー
「ボギーボビー」とは何を指すのか不明。「咲く」「枯れる」という表現と「笑う」「うたう」という擬人法の表現が混在している。単にバラを歌ったとは思えず、今は見る影もない男(=「ボギーボビー」)を歌った曲と見る。
海よ
バラード
中島みゆきの曲の中には海をテーマとしたものが多い。中でも暗い日本海を思わせる歌が大半である。そこには幼少期に過ごした岩内の情景が浮かぶ。この歌も岩内で見つめた日本海を追想する曲である。
アザミ嬢のララバイ
フォーク
中島みゆきがレコードデビューをした曲。母性愛が存分に発揮されている。若干24歳の女性が母性愛を歌う背景には父が産婦人科の開業医であったことによるのであろう。
踊り明かそう
フォーク
「ふられ節」の端緒を切る歌。思い切り明るく振舞うことで男への未練を断ち切ろうとしている。男からしても別れ際に泣きすがりつかれるより余程いい。両方の効果まで計算尽くされた歌詞である。
ひとり遊び
フォーク
5歳で岩内に引っ越した中島みゆきの実体験の歌か?「鬼さんこちら 手の鳴るほうへ」のせり上がるリフレインが哀愁を感じさせる。
悲しいことはいつもある
ジャズ
とても短い歌詞であるが奥が深い。悲しみが悪者のせいならそいつを憎めば済むが、誰も悪くはないと悲しみのやり場がない。願い事が相応に叶えばいいのに、全然叶わなかったり叶いすぎるても困ってしまう。
歌をあなたに
バラード
プロデビューを断り「何のために歌うのか?」「歌とは何か?」を模索した中島みゆきの出した答えが歌われている。明るいメロディに乗せて中島みゆきは凛々しく張りのある声で歌い上げている。
渚便り
フォーク
失恋歌。しかし暗さは全くない。渚がすべてを癒してくれる。この歌では暗い日本海ではなく明るい太平洋を感じさせる。
時代
フォーク
アコースティック・ギターのみの伴奏。1本のギターがアルペジオを弾き(中島みゆきの演奏と思われる。MUSICIANの項にA.Guitar中島みゆきとある)、「旅を続ける」からもう1本のアコースティック・ギターが加わる。歌声も感情をこめた優しい声でリスナーに諭しているように聞こえる。第4節の「まわるまわるよ」からは中島みゆきの声で輪唱になっている。
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