「『わかれうた』を筆頭に、フラれ節が延々と続き、長いトンネルの彼方に、更に暗闇がぽっかりと口を開ける。中島みゆき=怨み節のイメージを決定づけたのが、この『愛していると云ってくれ』だ。」
(『大衆歌としての「中島みゆき」案内』 別冊 宝島 音楽誌が書かないJポップ批評24)

この文章がこのアルバムの全体像を端的に表している。

私が男であってもふられた女性の怨みを共感できる。

編曲は1,2,4,5,7曲目を吉野金次、6,8曲目を中島みゆき、3,9曲目を吉野金次と福井峻が担当している。

中島みゆきが編曲者として表立って現れた最初であるが、「ミルク32」も「おまえの家」もフォーク基調であり、斬新な面を出しているわけではない。

このアルバムのオリコン最高位は、2位。
題名 歌詞
曲調
解説
「元気ですか」
朗読
途中でほんの少しパイプオルガンの演奏が入る以外は伴奏なしで詞を朗読する。その詞が暗い。男を取られた女の下へ電話をかけている。女へ皮肉を言わなくては済まない自分に嫌悪する。ラストの「うらやましくて」のリフレインが怨念の強さを増幅している。
怜子
ワルツ
ワルツといっても暗い曲調である。男に惚れられていいあんなになった女を羨んでいる。前の曲と連動しているかのようだが、これはこれで独立した曲である。
わかれうた
フォーク
初めてオリコン1位を獲得した。この歌のヒットにより中島みゆきは「別れ唄歌い」のレッテルが貼られたが、女性の心にぴたっとくるものがあったからこそ、大ヒットとなったのであろう。
海鳴り
フォーク
この曲も『海よ』と同じく、岩内での生活が背景にある。ふられ続けても、海鳴りだけがそばにいてくれる。
化粧
フォーク
女は何故化粧をするのであろう。この頃では男性も化粧をする時代だが、基本的に女は恋愛において受身であり、化粧をすることで男心をつかもうとしているのだろう。しかし、この歌では女はふられた男に最後に会いに行くに際し、「せめて今夜だけでも きれいになりたい」と願っている。女の未練はこういう形をもとるのかと、愕然としてしまう。
ミルク32
フォーク
ふられて昔の男友達の経営する喫茶店に来ている。題名が最初わからなかったが、この男友達は昔ミルクしか飲まなかったから「ミルク」というあだ名がついたのだろう。32は今では32歳になったということか。
あほう鳥
ロック
「御乱心の時代」に傾斜したロックの先駆け。 ふられ節。「あたしが生きてたことも忘れる」ほど未練が強い。
おまえの家
フォーク
イントロに雷雨の効果音が用いられている。ふっと訪ねてみたくなったおまえの家が昔と変わってしまったことに悲哀を覚えている。昔よく聴いた「あいつ」の曲のことを話題にすると「ギターはやめたんだ 食っていけないもんな」と返されて深い悲しみに溺れる。
世情
フォーク
中島みゆきが大学生だった当時は学園紛争の余韻が残っていた時期である。みゆきが直接闘争に参加したという資料はないが、北大のフォーク研究会に出入りしていたからには何等かしらの影響を受けたと思われる。学園闘争がいつしか本来の形から離れて「内ゲバ」に陥った中で「変わらない夢」を持ち続けた者たちの鎮魂歌である。
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